2008年12月12日

産経新聞が無料のiPhoneアプリになった件

●新聞社のビジネスモデルおさらい
賢明な皆様はご存知かと思いますが、今までの新聞社のビジネスモデルをおさらいしましょう。

「新聞社と販売店の関係図」

上の図の通り、新聞社のビジネスモデルは、販売収入+広告費である。

販売収入=700億円(スタンド)+17,500億円(宅配)
広告費  =7300億円

販売収入の宅配による17,500億円のうち、ここから販売店に配達6500億円と拡張補助金として1500億円が戻される。つまり、8000億円が店の取り分であ り、新聞社は9500億円を得る

つまり、新聞社は広告収入以上に、流通の独占によって生じる配達費に収入をよっている(流通の独占で利益を上げてきたのはTV局も同じ)。その戸別配達制度は、多くの世帯が新聞を購読しているからこそ成立していた。
ところが、購読世帯が減れば、莫大な経費をかけて配達するメリットがなくなる。では、どの程度減ると、戸別配達制度は崩壊するのか?

《1世帯あたり新聞購読率の推移》

    全国の世帯数新聞の発行部数一世帯の購読部数
    1993年4307万世帯4607万部1.06部
    1995年4423万世帯4651万部1.05部
    1997年4549万世帯4726万部1.03部
    1999年4681万世帯4728万部1.01部
    2001年4801万世帯4755万部0.99部
    2003年4926万世帯4728万部0.95部
    2004年4983万世帯4746万部0.94部
     ※「新聞の発行部数」はスポーツ紙を含まない一般紙の部数
     ※出所:社団法人日本新聞協会
上の図のとおり、2004年で0.94部(35歳以上の月極購読率は1世帯当たりおよそ1.2部。ちなみにアメリカはいま0.7部ぐらい)。そして2012年には1世帯当たり0.8部になると推計されている。これが0.6部や0.7部に落ちると、販売網を維持できなくなる。
(販売網のコストを減らすために、読売・朝日・日経が販売網の統合を決めているので、この数字に変化があるかもしれない)

明治時代から100年間もこのビジネスモデルでやってきた新聞社も、インターネットが普及して誰もが簡単に情報を発信できるようになることによって、流通機能が独占できなくなった。
流通の独占から開放され、ネットを通じてさまざまな情報に触れられるようになった賢明な読者たちの厳しい視線に晒され、ネットで情報を得るから新聞は取らないという若者たちの増加で、販売網が維持できなくなるのも恐らくは時間の問題である。
個別販売制度が崩れた時になって慌てて他の流通網を使おうとしても、時すでに遅しである。
それでは、新聞は今すぐに販売収入を諦め、広告収入だけでやっていくように方向転換すべきなのだろうか?つまり、電子媒体に移行すべきなのか?

日本の新聞の広告収入が35~40%程度に対して、アメリカでは80%以上が広告収入。ニューヨーク・タイムスにいたっては95%も広告です。広告収入が維持できれば、思い切って電子に移れる。ところが日本は販売収入に大きく依存しており、決断できないのです。
以上、『ネットは新聞を殺すのか?』&『新聞のなくなる日』(その1)
~100年守った新聞のビジネスモデルが壊れ始めた~
(日経BP社)およびビジネスモデル事例集(JNEWS.com)を参考にし、図を引用しました。

そんな中、本日のニュース。

紙面のレイアウトそのままで読むことが可能な、産経新聞の iPhone / iPod touch 版アプリ(Going My Way)
産経新聞(iPhone版)が利用できるようになっています。なんとアプリで用意されています。
新聞と同じレイアウトで見れるということで素晴らしい。これは、産経NetViewというサービスを以前からやっていたようなのでそれを利用した感じでしょうか。月額315円とかで提供されていたものが、 iPhone / iPod touch があれば無料なんですね。


iPhoneは「手でめくる」(つまむ?)という作業を可能にしているので、従来の新聞をめくるのが好きだった人の需要を取り込めるでしょう。何より、今でも新聞に対する信頼感は一般的には高いので、同じ無料ならば数多あるニュースサイトよりも新聞を読みたいという人の需要もあるでしょう。
読売・朝日・日経は「あらたにす」などという、誰にとっても(読者にとっても新聞社にとっても)何の価値もないニュースサイトを大々的に立ち上げたけれども、そんなのお構いなしの産経新聞のiPhone無料新聞。他の新聞が参入する前にやることで、読者数を増やし、販売収入を減らしてでも、広告収入を増やしたいということでしょう。なかなか良いと思います。

流通の独占ができなくなった以上、流通独占によって得られていた莫大な収入が得られなくなるのは当然のことだし、ネットのほかの情報メディアと競合するのも当然である(むしろ今までの独占状態が変なわけです)。
新聞社の役割は「流通」と「コンテンツ製造」である。今までは前者の独占によって、後者がわりと無批判的に教授されてきた。ところが、流通独占が終わり、この2つのうち、後者が重要になってきている。後者だけが残った時に、価値がある新聞を提供できる新聞社だけが生き残ることになるでしょう。優秀な記者もいるし、取材網も広いし、過去の蓄積もあるし、それなりに頑張れるのではないでしょうか。とはいえまだまだ読売・朝日・日経は販売網から得られる収入を諦められず必死な感じですが。それほど今まで美味しい思いをしてきたんでしょう。

それにしても、貧乏人ほどiPhoneが必須になりつつありますね。


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